エキュレ〜écurer〜

※2019年追記。エキュレは現在、閉店しています。


エキュレのコーヒー

エキュレ、美食の王様として有名な来栖けいさんが昨年開いたレストラン。なんでレストランのネタかというと、このお店、コーヒーが面白い。食後のコーヒーが驚愕のグランクリュカフェなんです…。

僕が知る限り、コーヒーが美味しいレストランはほとんどないのですが(イリーのコーヒー豆を使っていたら合格みたいな感じですよね。結構高級店でも飲めないコーヒーが出てくる)、そんな中オープンしたエキュレ。これは行くしかないでしょう。行ってきました。

夜のコースは二種類あるのですが、グランクリュカフェが飲めるのは高い方のコースで1万6千円(グラスでワイン3杯飲んで2万3千円。)結構なお値段ですが、シェフはカンテサンスのスーシェフだった人だし、料理も面白そうだから、まぁたまにはいいよね。(ちなみにここはシェフが1年で変わる。来栖さんは若手シェフを育てたいとの思いからお店を作ったようです。基本フレンチのようですが、場合によっては中華とか和食もあるみたいだし、その場合でもグランクリュカフェでいくのかな?)

ここの料理、好きですね。でも料理ブログじゃないからいきなりコーヒーの話いっちゃいます。
前もってなんも調べてなかったので驚いたのですが、ただグランクリュカフェを出すだけじゃないんです。コーヒーは来栖さんが席で点ててくれます。しかもネルドリップ。ネルは予想してなかった。いちいち客席でドリップするなんて大変だろうって思いますが、抽出を見ていて納得。かなりの高速抽出です。

コーヒー豆はコロンビアのベジャビスタ農園のもの。(エルサルバドルのセルバネグラも使っているみたい。ヴィンテージは2008。もうすぐ2009年産に変わる)客席でボトルを開けるところからはじめてくれます。使用する分のコーヒー豆だけがボトルに入っていたので、お店用に作ってもらっているんですね。グランクリュカフェはボトルを開けたときに本当にいい香りがする。

使う粉の量は40グラム。300ccくらいかな(二人分)。グラインドはかなり粗く、落とす湯は太い。40グラムも入っているのにすぐにコーヒー液が落ちてくる(結構多く落ちる)。蒸らしの後、数度に分けて湯を注ぎ、量に達したら終了。これは速い。道化宿の次くらいに速い抽出かも。

コーヒーを注ぐのは専用のグラス。持っても熱くないように、かつ冷めないように厚めのグラス。香りも閉じ込める形。特別に作っているようです。

抽出が終わったコーヒーはグラスに注ぐ前にしっかりとまわします。これも面白い(カフェドカッファのデカンタージュに通じるな)。コーヒーは微粉もしっかり取り除いていて、この微粉はコーヒーオイルにしているみたいです。このコーヒーオイルもコース内で味わえます。それとデザートにはショコラティエミキに特別に作ってもらっているグランクリュカフェを使ったボンボンショコラも出る。贅沢なお菓子だ。そういえばグランクリュカフェを販売している川島さんの本にもグランクリュカフェを使ったスイーツネタあったな。原産地の人が作ってくれたってやつ(間違えた。それはグランクルカフェじゃなくてブルボンポワントゥだ)。

湯を太く注ぐにしてもずいぶんと落ちるのが速いなぁって思っていたら、なんとネルの底を持ち上げてねじっていました。これによって湯が太く落ちていたんですね。通常の考えとは逆のスタイル。

これらのこだわりは、来栖さんのコーヒー感をあらわしていると思います。あくまでクリアに。雑味を出さずに素早くってことなんでしょう。さらにポットにもこだわっていて、今は銀のポット(たしか)を使っているのですが、銅のポットを使ったらとても美味しくて、もう少し練習したら変えるらしい。湯温も毎日変えながら試しているらしく(0.1とか0.2度変えたりするみたい)、かなりのこだわり。正直ここまで考えてやっているとは思っていなかった。しかもコーヒー屋やコーヒーマニアとは違う美食家ならではの発想。

エキュレのグランクリュカフェ

グランクリュカフェのベジャビスタは前にも飲んだことあるのですが、これは別物。香りはナッツやオレンジ系のフレーバーが豊かに広がり、味わいは非常に優しい。かつ甘く、コーヒーなんだけどコーヒーじゃないみたい。苦味はなく酸味もやさしい。冷めてくると酸が多少立ってきてさわやか。

一番凄いなって思ったのは口当たり、質感。柔らかく丸い。こんな感じは初めてだ。ネルの力+スワリングの効果なんだろうね。

香りはコーヒーなんだけど、お茶みたい。食後に出てくる和菓子とも合ってしまう(ちなみに食後のお菓子は来栖さんが全国から集めてきたお菓子が数種類出てくる)。ガレットデロワ(カーヴァンソン)も出てきたのですが、ガレットデロワのアーモンドの風味がコーヒーの甘味と合わさるととてもおいしい。キャラドゥー(パティスリーリョーコ)というチョコレートとキャラメルのお菓子は、とても濃厚で、コーヒーの味わいを平坦にしてしまうかな。でもお菓子を主体で考えるとキャラメルの風味を引き立てる。

個人的にはもっと濃く抽出して力強さを出したいけど、これはこれでアリだと思ったし、ホントに美味しい。面白いからコーヒー好きには飲んでもらいたいな。川島さんもお店に来るようで、このコーヒーを飲んで驚くそうです。いや驚くよ。

来栖さんはコーヒーとチョコレートを比べると、チョコレートにはホントにすごいものがあり(日本には入ってきてないものに凄いのがたくさんあるらしい)、それに比べるとコーヒーは…みたいに思っていたようなのですが、グランクリュカフェに出会って、コーヒーの印象が変わったとのこと。

確かにグランクリュカフェは究極ともいえるコーヒーだと思うけど、他にも色々と面白いコーヒーあるから、来栖さんには飲んでもらいたいなぁ。

エキュレで、オリジナリティあるお茶のようなグランクリュカフェを飲んだのに始め、今まで普通に円錐ドリッパーで抽出したグランクリュカフェ、ネルでプロに抽出してもらったデミタスなど色んな形で飲んでみると(こんな色々な味わいのグランクリュカフェを味わっている人他にいるのか?)、たかが抽出だけでここまで多様な美味しさを作れることに感動するとともに、焙煎のことを改めて考えてしまった。

グランクリュカフェのローストが悪いわけではなくて、とてもいいのだけど、例えば、オオヤさんがローストしたらとか、ワゾーの宗さんだったら、折り鶴や、ぜにさわだったらどんな味にするんだろうとか思ってしまいます。それはもう多様な味を作ってくれそうなんだけどなぁ。生豆ほしい…。

ついでにちょろっとワインの話。まだオープンしたばかりのエキュレはワインリストがなく、ワインは料理に合わせてグラスで三杯おまかせでもらったのですが、帰りにセラーを見ていたら、いいワインがあるある。まだ数こそ少ないにしても、アマローネの59年とかあって驚いた(造り手忘れた)。出してくれたグラスも結構面白いものだったので、これから期待大かもね。

エキュレの2度目の訪問の記事はこちら

エキュレの3度目の訪問の記事はこちら

エキュレの店舗情報(閉店)

住所:東京都港区西麻布2-26-20 ニューシティ・レジデンス西麻布ツインタワーII B1F

電話番号:

営業時間:昼】 12:00~13:00(L.0.) 
【夜】 18:00~21:00(L.0.)
【bar】 21:00~23:00

定休日:毎月26日と不定期1日

※2019年追記。来栖さんの映画になりそうなサクセスストーリー。