コーヒーをお酒で例えてみる
ちょっと前の記事で、コーヒーはワインの真似をやめてからが面白そうなんて書いたけど、コーヒーはいくらがんばっても、ワインのグランヴァンの熟成したものには全く及ばないとは思います。COE1位だろうが、エスメラルダだろうがかなわない。だから同じ土俵で戦うのは意味がない気がします。
とか言いつつ、ちょっとコーヒーをワインに当てはめてみます。
スペシャルティの中煎り程度の華やかなコーヒーは、ピノノワール、それもブルゴーニュではなく、新世界(ナパなど)の若いワインに通じるニュアンスがあります(中にはブルゴーニュっぽいものもあるけど)。果実味が豊かで華やか、フルーティーで硬さがない。スペシャルティといっても色々とありますが、割と似通っているのでだいたい通じます。ちょっとシトラス系の香りが強いものなら、ニュージーランドのソーヴィニヨンブランってとこでしょうか。
スペシャルティと対極にあるような、オールドビーンズの良質なものは、ボルドーなんかの古酒、ちょっとピークを過ぎたくらいのものに通じる味わいがあります。この抜け具合が好きな人にはたまりません。
コモディティクラス(である必要はないけど)の深煎りに耐えうるコーヒー豆を、上手に焙煎して濃く点てたものは、ワインではなく洋酒のニュアンスがあります。ウイスキーといえばいいかな。ウイスキーもそこそこ飲むので、実際はウイスキーの香りなんかしないんだけど、ニュアンス的にはウイスキーというほかないようなリッチで芳醇な香りが生まれます、そして濃く点てているので力強く、アルコール感みたいなものも感じるわけです。
そういう風に考えると、コーヒーってすごいなぁって思います。色んなタイプのお酒のニュアンスがあるわけです。ウイスキーみたいなワインとかないですからね。ワインの表現でもコーヒーという場合がありますが、これは樽のロースト香のことを示していますね(カカオとかも同様)。
コーヒーは、コーヒー豆の種類や、焙煎、抽出法でさまざまな味が作れちゃいます。それが魅力。
こうじゃないとダメって考える人が多いけど、実際は様々な味が作れるところがいいんですね。プロなら自分の信じるスタイルが絶対と考えるのはある意味正しいですが、僕なんかはただの飲み手なんで、色々と試したいわけです。
色んな良さがあるんだけど、なんでもいいわけではないです。その中で質を考えますが、質が高いものの中にも色んなベクトルのものがあります。
コーヒーのプロの方には食の経験が浅い人が多い気がします。もっと色んなレストランとか行って、味の幅を広げた方がいい(でもコーヒーのプロの方には、他には目もくれず焙煎だけを何十年と磨き上げ、圧倒的な味を作る方もいるけど)。
昔、コーヒーの焙煎を肉の焼き具合に例えた、よくわからない記事を読んだことがあるけど、肉だって、日本人が好きな霜降りも、近年人気の赤身だってどちらも美味しいし、熟成させた肉、ドライエイジングでもウェットエイジングだって良い、強火で一気に焼き上げてもいいし、低温調理でじっくり休ませながら焼いたって美味いものは美味いし、まずいものはまずい。
それとおんなじでコーヒーだって、スペシャルティでもコモディティでもオールドビーンズでも、どんな抽出法でも焙煎でも美味いものは美味いし、まずいものはまずい。加えて好みがある。そんだけの話なんですけどね。
コーヒーの多様性は本当に魅力的です。コーヒー豆を求めて世界中をかけまわっている人も、先に書いたような焙煎だけに命をかけている人も、同様に尊敬します。