プロヴィナージュと冷涼ワイン

※2019年追記。プロヴィナージュは現在閉店しております。この記事を書いただいぶ後に、プロヴィナージュのシェフの方たちとお話しする機会があり、記事にした以上に深くワインを考えていることがわかりました。ワインを注ぐ人によって生じる差異など、僕も色々と個人的に考えていた話が通じて、嬉しく思いました。閉店は残念ですね。


プロヴィナージュ〜provinage〜

フレンチレストランのプロヴィナージュ。ここは冷涼ワインを売りにしているお店です。店名のプロヴィナージュは、フィロキセラ以前にブルゴーニュで広く行われていたぶどうの木の繁殖方法のことです(現在はかなり少ない)。

プロヴィナージュの提唱する冷涼ワインとは?

冷涼ワインというと、寒い地域でできたワイン?って考えてしまいますが、単純にそうではないようです。プロヴィナージュが定義する冷涼ワインは、「味わいの基軸を成すものが果実味や高いアルコールではなく、上質なミネラル感と酸に由る、凛とした味わいの余韻の長いワイン」とのこと。

冷涼な産地に表れやすいことから、冷涼ワインと名づけているようですが(もともとは言葉通り寒い地域のワインの意味で使っていたそう)、品種とテロワールの相性が良ければ、暖かい産地でも出来る。

冷涼な産地のワインの風味が濃くなる理由としては、クールクライメイトパラドックス理論をあげています。これは、ぶどうの糖度が上昇するスピードは気温の高さに比例するが、ぶどうの生理的熟成は気温の影響を受けないというものです。

温暖な地域は果物としての成熟の前に糖度が上がってしまいやすく、逆に冷涼な産地は生理的成熟と糖度の上昇が平行して進むことで、味わいに深みが生まれるんだそうです。

果実味ではなくミネラル感を重視する理由は、果実味は温暖であれば容易に出来るのに対して、ミネラル感は上質な土壌がなければ生まれないからです。

また、温暖な産地のワインは果実味とアルコールの強さで、ファーストインパクトは強くて、わかりやすい味わいだが奥行きと余韻にかけるものが多く、冷涼ワインはインパクトは控えめながら、繊細で微妙な味わいを楽しめる(説明では温暖な地域と、冷涼な地域の比較をしていますが、先に書いたとおり暖かい地域でも冷涼ワインはできます)。

アメリカを中心とした分かりやすさを基準にした評価を鵜呑みにするのはおかしいとの考えなんですね(これってスペシャルティコーヒーのことじゃ…)。

なるほど言わんとしているわかります。肝心の味はどうなんでしょう。先日行ったときに3種類ワインをいただきました(白2赤1)。

冷涼ワインの味わい

最初にいただいたモーゼルのクレメンスブッシュ・リースリング 2010は本当に美味しい。野生酵母で時間をかけて木樽発酵させているそうなんですが、大切なのは必要なだけ時間をかけること。これぞミネラル感のあるワインだよねって味。酸がしっかり、キュッと気持ちのの良い伸びのある酸。

ローランルーミエ・オート・コート・ド・ニュイ2010は、なるほどこういう味のことを冷涼ワインと言うのがわかりやすいほどわかる。個人的な好みからいうと、もっと好きな感じのブルゴーニュルージュはあるけど、美味しい。

方向性は明確で好感が持てましたね。こういう捉え方もあるんだと、また勉強になりました。

プロヴィナージュの料理

それとプロヴィナージュは料理も面白かったです。アジアのハーブやスパイスを使った香りのある酸が乗った料理が多く、ワインとの相性も良かったですね。


プロヴィナージュはカウンターもあって、バー利用も出来なくもないので冷涼ワインに興味が沸いた方は是非ワインだけでも。

プロヴィナージュの店舗情報(閉店)

住所:東京都港区西麻布3-1-19 小山ビル2F

電話番号:

営業時間:18:00~2:00L.O

定休日:日曜