焙煎工房しゃおしゃん
岩手県の自然あふれる極楽野にあるしゃおしゃん。ここは焙煎の魅力を堪能できるお店なのですが、焙煎と言ってもコーヒーではなくお茶。しゃおしゃんは焙茶工房なんです。こういうスタイルはたぶん全国で、しゃおしゃんだけなんじゃないかな？
結構前からしゃおしゃんのことは知っていたのですが、盛岡市内から今の極楽野に数年前移転していて、試飲をかねたサロンを最近まで休んでいました。そのサロンが月曜のみですが再開されたので、行って来ました。予約制です。
知らなかったら絶対通り過ぎてしまうお店。看板なんかもないですし、説明を受けていたのに実際通り過ぎました。お店というよりはガレージ。まだ改修途中らしく、壁も断熱材で覆われているだけのところもあるのですが、奥にあるお茶を飲むスペースはとってもいい。
目の前には大自然。この景色を見ながら飲むお茶はとてもぜいたく。最高のおもてなしです。外で飲むことも出来ます。（自然いっぱいの極楽野はピザ屋さんとか、蕎麦屋さんなんかも点在しているみたいです。水が美味しいのかな？自家焙煎のコーヒー屋もあったんだけど行くの忘れた…）
サロンは一時間１０００円で試飲が出来る形で、お茶を買えばサロン代金はマイナスされます。好きなお茶を店主、前田さんが丁寧に点ててくれます(とてもやさしい雰囲気のある素敵な女性です）。
お茶を焙煎するって言ったらほうじ茶？って思いますが、ちょっと違います。メインはプーアル茶の焙煎。
台湾にはプーアル茶を焙煎する人が何人かいるらしく、店主の前田さんは、そのうちの一人、宋さんに焙煎を学んだそうです（台湾でもプーアル茶の焙煎は少数派）。
それともう一つ、気仙茶という気仙のお茶があります。江戸時代から飲まれていたらしい気仙茶ですが、時代とともに飲まれなくなり、最近までほとんど野生化していたそうです。
前田さんはこの気仙茶を復活させる取り組みを行っていて、このお茶もしゃおしゃんでいただけます。プーアル茶は宋さんが焙煎したお茶なのですが、気仙茶は前田さんの焙煎です。お水は鉄瓶で沸かします。まろやかになるとのこと。
まずは気仙茶の水出しをいただきます。焙煎香が気持ちいい。初めて飲む味わい。独特なわけではなくてしみじみと美味しいお茶です。緑茶とほうじ茶の間だね。緑茶の味を邪魔しない程度の焙煎香です。
この気仙茶は2009年摘みのやぶきたなのですが、もう一つ、2010年摘みの在来種釜炒りもあります。今年の6月3日につんだお茶だそうです。
次にいただいたのは、邦威青茶（ほういせいちゃ）。これはプーアル茶の生茶。2004年秋摘みです。
プーアル茶の焙煎ってどうやるんだろう？って思っていたのですが、餅茶（かたまりの状態）をオーブンみたいので焙煎するそうです。120度くらいって言っていたかな？しかも何度も焙煎するらしく、このお茶は6年間の間に3回焙煎してあるそうです。
もっと時間がたったらまた焙煎することもあるようで、焙煎を重ねると味が細やかになるとのこと。ただ味もなくなっていくので悪いお茶だと美味しくない。
しゃおしゃんは珍しく聞香杯を使います。僕も持ってますけど、まず使わない聞香杯（香りを楽しむための杯）。あんまり使う意味を感じてなかったのですが、やっぱり良いかも。焙煎をして香りを際立たせたお茶には合ってますね。時間が立つごとに香りが上ってくる。
邦威青茶はとても飲みやすいプーアル茶。プーアル茶って飲みにくいお茶だけど、これは苦手な人でも飲めちゃうかもね。これが焙煎の力か。優しく甘い。
何十年も熟成させたプーアル茶の魅力とはまた違った美味しさがあります。
３～４煎飲んだところで、次のお茶。これもプーアル茶の生茶で、千年古茶、2003年春摘み。樹齢数百年のお茶の葉から作られたお茶。2003年以降は品質が大きく変わってしまったらしく事実上ラストヴィンテージ。
このお茶もしみじみと美味い。最初の１煎目は前のお茶の味にひっぱられて、いまいちよくわからない部分もありましたが、２煎、３煎と重ねていくと美味しさを実感していきます。
結局１時間３０分くらいはいたのかな？あっという間の時間。冷房もないところだけど、苦にならない。夏に合うお茶ですね。とても気持ちが良い空間でした（特別お茶好きなわけではない友人を何人も連れて行ったけど、みんな楽しんでましたね）。
東京からはちょっと遠すぎますが、また違う季節にも行きたいなって思えるお店。なかなかないなぁ、こういうところは。
家に帰って飲んだ気仙茶在来釜炒りは、茶葉の香りから抜群でした。やぶきたも冷茶にして飲んでみたら最高（水出しではなく）。毎日飲みたいような味のお茶ですね。特別なものではなく、毎日の生活を少し豊かにしてくれるようなお茶。ごちそうさまでした。
焙茶もいいね。自家焙煎のコーヒー＆お茶＆チョコのお店やろうかな…。
