NAOMIとGEORGEのビール〜OMORI SANNO BREWERY〜
焙煎したコーヒー豆を漬け込んだビールはたまに見かけますが(そしてだいたい美味しくない)、コーヒーチェリーを加えたビールを嫁が見つけてきました。
大森山王ブルワリーがリリースしているNAOMIというビールです。
これは大森が舞台として描かれている谷崎潤一郎の作品、「痴人の愛」をモチーフに造られているビールで、もう一種類のビール、GEORGEと対になっています。
「痴人の愛」は嫁が好きな作品の一つで、僕も昔読んだことのある小説です。嫁は大森にも住んでいましたし、思い入れのある作品のよう。
小説の主人公2人の名前を冠したビールなのですが、セットで売られていたので購入してみました(ギフトボックス付きの高めのやつにしました。箱が可愛かったので)
ビールのテーマはハイカラとのこと。ラベルのデザインが素敵ですね。ナオミはカフェ店員だったのでコーヒーチェリーなのだとか。ジョージは伊予柑を使った白ビールです。
コーヒーチェリーと聞いて、材料とか手に入るのかな?と一瞬考えましたが、カスカラみたいなものを使って造るんでしょうね。
ナオミの原材料など詳しいことはよくわかりませんでしたが、それとは関係なくベルギーにもカスカラを使用したビールがあるのを見つけました。ドゥーニドゥ!というカスカラブラウンエールです。これも飲んでみたい。
このビールは大森で醸造しているのかと思ったら、表記を見ると違いました。それは少し残念。工場があるのか、委託しているのか不明です。
ナオミのビールはペールエールとのこと。飲んでみると結構しっかりとした苦味のある味わいです。コーヒーチェリーの風味は‥よくわかりませんが(コーヒーチェリー自体昔一度食べたことあるくらいですが)、ほのかの焙煎したコーヒーぽいニュアンスがあります。まぁこれはコーヒーチェリーがどうこうではなく麦芽のロースト具合がちょうどコーヒーぽくなっているのだという気はしています。
ジョージはさらっと平坦。ヴァイツェンでここまで厚みのないタイプは珍しいと思う。伊予柑の風味は面白い。愛媛県中島産の伊予柑なんだとか。柑橘の味と酸が合わさって他にはないユニークな味わいのヴァイツェンになっています。かなり酸をしっかり感じるビールです。
ビール自体の完成度はまだまだな感はありますが、さらりとしたビールがジョージで、どっしりしたのがナオミと思うと、なんだか面白い。
それぞれのビールをナオミとジョージだと思って飲むと、ジョージが可愛く見えてきます。表面上は大人な感じで実は平坦で薄っぺらいジョージと、可愛らしい女性に見えて芯が強く骨太な(かつ性格の悪い)ナオミ。
完成度云々は別にして、なかなか良い表現のビールに思えてきます。
ジョージのエチケットデザインが馬というのもね。切り取るのはここかと。
何かをイメージした味わいを作るということに関してはビールだったりカクテルが強いですね。ワインやコーヒーではない。いや、コーヒーカクテルならあるか(モクテルも含めて)
ワインもナチュールの造り手ならそういうのもないわけではありませんが、ビール、カクテルは作りやすい気はしますね。
そのイメージが合っているかどうかは難しいところだとは思いますけれど、それを想像して飲むのも楽しいものです。
個人的な嗜好としては土地の個性を味わうのを第一にしているので、まぁ遊びの範疇ですが、楽しいことは楽しいですね(造り手の思想が入りすぎてないものを好んでいます)
このビールは、なるほどそういう見方をしているのかと、納得できる方向性の味わいですしね。
とても楽しんで飲めました。コーヒーチェリーのビールとして楽しめたかというと微妙ではありますが、これは買ってよかったビールです。